「タブレット学習をやっているのに、やっぱり先生に教えてもらわないとダメなんでしょうか?」
──先日、ある保護者の方からそう聞かれました。
延岡市の小中学校では、すでに一人一台のタブレットやAI学習ドリル(Qubena等)が導入されています。家でもタブレット教材をやらせている。けれど、なかなか習慣にならない、成績も思うように伸びない──そんな実感を持つご家庭が増えています。
「便利なツールがあっても伸びないなら、やっぱり昔ながらの塾で、先生に一から十まで教えてもらわないとダメなのか」
この記事では、その問いに対する、HERO'S延岡校なりの答えをお伝えしたいと思います。
結論から言えば、「タブレットにお任せ」でも「先生が全部教える」でもない、第3の道があります。
1. ひとくちに「AI学習」と言っても、役割はそれぞれ違う
まず、大事な前提からお話しします。
保護者の方の多くは、「AI学習」「タブレット学習」をひとくくりにして考えていらっしゃいます。けれど実際は、学習システムには全く違う役割を持ったものがいくつもあります。
たとえば、私たちが教室で実際に使っているシステムを役割で分けると、こんな具合です。
解説してくれるもの
映像でわかりやすく授業をしてくれる仕組み(edu+)
苦手を見つけてくれるもの
間違えた瞬間に「この子のつまずきの根本はここ」と特定する適応型AI(atama+)
記憶を定着させるもの
忘れる前にもう一度出題してくれる仕組み(Monoxer)
読む力を鍛えるもの
文章を速く正確に読めるようにするトレーニング(SRJ速読解力)
これらは全部「AI」や「システム」と呼ばれることもありますが、役割は全く違います。
「タブレットを渡しておけば、AIが全部やってくれる」というのは、実は大きな誤解です。それぞれが得意なことを担当しているだけで、「全部おまかせ」できる魔法のツールではありません。
そして、ここが一番大事なのですが──「自分はどうしたいか」を考えることだけは、AIには代わりにできないのです。
2. では、「先生が全部教えればいい」のか?
ここで、もう一つの選択肢が浮かびます。
「AIに任せてもダメなら、やっぱり昔ながらの塾で、先生がつきっきりで教えてくれた方がいいのでは?」
これも、とても自然な発想です。
しかし、私たちは長年、教室で生徒たちと向き合ってきて、こう考えるようになりました。
先生が全部教え込むことは、実はお子さんの「自分で考える力」を奪ってしまうのです。
「ここはこう解くんだよ」「答えはこれだよ」と先回りして教え込まれ続けると、お子さんは「分からなければ先生に聞けばいい」と思うようになります。自分で考える前に手を挙げる。失敗しないように、先生の答えをなぞるようになる。
これは一見、効率がいいように見えます。けれど、お子さんが大人になったとき、自分の人生で直面する難しい問題には、答えを教えてくれる先生はいません。
「自分で考えて、自分で決める」力は、子どものうちに育てておかないと、後から急には身につかないのです。
3. 第3の道:「自分はどうしたいか」を一緒に考える時間

では、私たちは何をしているのか。
それは、「教え込む」のでも、「タブレットを渡すだけ」でもない、お子さんの隣に立って一緒に考える関わり方です。
具体的には、こんな問いかけをします。
- 「今日、何を考えていた?」
- 「次、どうしてみたい?」
- 「うまくいかなかったとき、何が分かった?」
- 「君が大事にしてることって、何だろう?」
先日、ある中学3年生が机の前でじっと固まっていました。問題は解けるはずなのに、手が動かない。
「どうした?」と声をかけると、しばらく黙ったあと、ぽつりと言いました。
このとき彼に必要だったのは、問題の解説でも、「頑張れ」という励ましでもありませんでした。
「そっか。自信ない、っていつから感じてた?」その問いひとつで、彼は自分の内面と向き合い、やがて再び机に向かい始めました。
こういう時間は、AIには代われません。そして、先生が一方的に答えを教え込む時間とも違います。
「自分はどうしたいのか」を、お子さん自身が考え、言葉にするための時間。私たちは、その隣に立っています。
4. 「システム × 対話 × 場」の組み合わせ

ここで、HERO'S延岡校が大事にしている3つの組み合わせの意味が見えてきます。
学習システム(教材)の役割
役割の違うシステムを、お子さんの状況に合わせて組み合わせる。これは、人間が一人ひとりに対して同じ精度ではできない仕事です。知識の習得や定着は、システムに任せた方が圧倒的に効率的です。
一緒に考える時間(人)の役割
お子さんの隣に立って、「自分はどうしたいのか」を一緒に考える。沈黙を恐れず、お子さんが自分の言葉を見つけるまで待つ。これは「引き出す(コーチング)」関わり方であり、少なくとも今のAIだけでは担いきれない、人の関わりが必要な領域です。
集中できる場(学習塾)の役割
この2つを、ひとつの空間で、毎週決まったリズムで何年にもわたって続けられる場所をつくる。家庭でも学校でもない「第三の場所」があって初めて、システムと対話が「日々の習慣」になっていきます。
この3つが組み合わさることで、はじめて「成績」と「自分で考える力」の両方が育つ仕組みになります。どれかひとつが欠けても、片輪走行の塾になってしまうのです。
なお、この設計は、認知科学者バーバラ・オークリー博士の「集中モード × 拡散モード」理論、教育心理学者ピアジェの「他律から自律への発達理論」、デシ&ライアンの自己決定理論など、複数の研究領域からエビデンスに支えられています(参考文献は本ページ末尾)。教室での実装の詳細は、メソッドの全体像をご覧ください。
5. なぜ「今」、この組み合わせが必要なのか

「考える力を育てるなんて、昔から言われていることじゃないか」──けれど、いま、これがかつてないほど切実になっている理由があります。
お子さんが大人になる頃には、「言われた通りに正解を出す仕事」のかなりの部分が、AIに置き換わっているからです。
そのとき、「AIに使われる側」に立つのか、「AIを使いこなす側」に立つのか。この分かれ道は、子どものうちに「自分は何をしたいのか」「何を疑い、何を確かめるのか」を身につけたかどうかで決まります。AIは「正解を出す」のは得意ですが、「自分の答えを疑う・検証する」のは、まだ人間の領域です。
塾の役割は、「ただ点数を上げる場所」から、「点数を上げながら、AIに使われない自分を育てる場所」へと、静かに変わってきているのです。
おわりに
「タブレット学習だけでは伸びない」──その通りです。
「でも、先生が全部教え込むのも違う」──私たちはそう考えています。
第3の道は、「学習システムを役割で組み合わせる × 一緒に考える時間 × 集中できる場」。
これからの時代に、お子さんに本当に必要なものを用意していると、私たちは確信しています。
お子さんの塾選びでお悩みの方は、ぜひ一度教室にお越しください。
実際にどんなシステムをどう使っているか、一緒に考える時間がどんなものか、ご自分の目で見ていただくのが、いちばん早いと思います。
参考文献
- Oakley, B. (2014). A Mind for Numbers. Tarcher./Coursera「Learning How to Learn」── 集中モード × 拡散モード理論
- Smits, A. et al. (2025). Behavioral Sciences, 15(7), 861. / Ogut, E. (2025). BMC Medical Education. ── ポモドーロの実証研究
- Piaget, J. (1932/1965). The Moral Judgment of the Child. ── 他律から自律への発達理論
- Ryan, R. M. & Deci, E. L. (2017). Self-Determination Theory. Guilford Press. ── 自己決定理論
- Cirillo, F. (2018). The Pomodoro Technique. Currency. ── ポモドーロ・テクニックの提唱
- Ericsson, K. A. et al. (1993). "The Role of Deliberate Practice." Psychological Review, 100(3). ── 熟達と集中時間
- Dunlosky, J. et al. (2013). "Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques." Psychological Science in the Public Interest, 14(1). ── アクティブリコール・分散学習